DOW(ダウ・インク)今後の見通し
ダウインク(旧ダウケミカル)の将来性を図るために、まず、金利と株価チャートの推移を参照し、次に、直近の決算を確認します。
目標株価やPERなどの情報も踏まえて主な指標についても掲載します。
金利と株価:過去~現在
※チャート左目盛り:青線は株価推移、赤線は200日移動平均線
※チャート右目盛り:緑線は10年国債利回り
※株価の成長率や前日比(前日始値~前日終値)、52週高値/安値のほか、PER(株価収益率)、時価総額、株式数、取引の出来高などの内容を更新。リアルタイムは無理ですが株価は最大20分ディレイでフォロー。
銘柄比較については関連記事(DOWとDDを比較:ダウインクとデュポン)を参照
直近決算
4月23日(米国時間)にダウインクは決算を発表しました。
★業績
《四半期》
・EPS:予想-0.27$→結果-0.14$
・売上高:予想96.5億$→結果98億$(前年同期比-6%)
★出所
・IRプレスリリース
・予想値はstreetinsiderを参照しました
企業概要
ダウ・インク(Dow Inc.)は、素材科学の知見を基盤に化学品・先端材料を開発・製造・販売する世界有数の総合化学メーカーです。主力市場はパッケージング、インフラ、モビリティ、消費者向け用途など多岐にわたり、北米を軸に欧州・中東・アフリカ・インド、アジア太平洋、南米へグローバル展開しています。2025年通期の売上高は約400億ドルで、2024年通期の約430億ドルから7%減となりました。拠点は29カ国で91製造拠点、従業員は約34,600人です(いずれも2025年末時点)。[1]
事業セグメント
事業は次の3セグメントで構成されています(社内は6事業を3セグメントに整理)。2025年は、ポリエチレンや機能性ポリマー、建築・工業用途などの価格下落が響き、全セグメントで売上が減少しました。[2]
- パッケージング&スペシャリティプラスチック(P&SP)
ポリオレフィンを中心に、食品包装・工業用フィルム、接着剤、高機能樹脂(エラストマー)などを展開。社内ハイドロカーボン&エナジーによるエチレン一貫体制を背景に、耐久性・安全性・物流効率の向上に寄与します。2025年通期の売上高は199.70億ドル、営業EBITは8.27億ドルでした。2024年比では売上が8%減となり、ポリエチレンや機能性ポリマーの価格下落が主因でした。[2] - 産業用中間体&インフラストラクチャー(II&I)
Industrial SolutionsとPolyurethanes & Construction Chemicals(CAV=塩素・苛性ソーダ等を含む)で構成。エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド誘導体、アミン、溶剤、グリコールエーテル、ポリウレタン原料(MDI・ポリオール等)を供給し、洗剤・医薬・塗料・建材・モビリティ用途を支えます。2025年通期の売上高は111.63億ドル、営業EBITは5.61億ドルの赤字でした。建築、工業、耐久消費財関連の価格下落と稼働率低下が重荷となりました。[2] - パフォーマンスマテリアル&コーティングス(PM&C)
Coatings & Performance MonomersとConsumer Solutions(シリコーン等)で構成。建築・工業用塗料、特殊コーティング、高機能シリコーン、接着剤を提供し、自動車・家電・建設分野の性能・耐久・意匠を高めます。2025年通期の売上高は81.34億ドル、営業EBITは3.06億ドルでした。建築・塗料用途や上流シロキサンの需要低迷が続く一方、消費者・エレクトロニクス用途の一部需要は下支えとなりました。[2]
強みと戦略
- 技術革新
1897年の創業以来、素材科学の深い専門知識を基に高付加価値製品を継続的に創出してきました。現在も包装材、電線・ケーブル、モビリティ、建設、電子材料、消費者向け用途などで、樹脂、シリコーン、コーティング、ポリウレタン関連製品を幅広く提供しています。[1] - サステナビリティ
再生可能エネルギー・リサイクル材の活用や低炭素素材を拡大しています。カナダ・フォートサスカチワンの「Path2Zero」計画は、2023年11月に最終投資決定(FID)を下した大型プロジェクトで、世界初のスコープ1・2正味ゼロのエチレン一貫設備を目指す計画です。ただし、2025年4月に同社は市場環境に合わせるため、Path2Zeroの建設を遅らせると発表しました。プロジェクト自体へのコミットメントは維持するとしていますが、旧稿のように「予定通り進行中」と読める表現は避ける必要があります。[3][4] - 循環型ポートフォリオ
2024年に北米のメカニカルリサイクラーCirculusを取得し、年5万トン規模の再生材能力を追加しました。これにより、包装材などでPCR(再生材)需要に対応しやすくなります。[5] - 事業の集中と入替
2024年12月、ラミネート用接着剤事業をArkemaへ売却完了しました。対価は1.5億ドルで、イタリア・米国・メキシコの5拠点が移管されました。2025年には土壌燻蒸製品ラインやDowAksa持分の売却も行い、非中核資産の整理を進めています。[6][1] - 欧州資産の最適化
構造的課題に対応するため、欧州の上流資産3件の閉鎖を2025年7月に発表しました。対象は、独ボーレンのエチレンクラッカー、独シュコパウのCAV、英バリーのシロキサンで、2026年中盤開始〜2027年末完了予定です。欧州はエネルギーコスト、規制、需要低迷の影響を受けやすく、同社は高コスト資産の整理を進めています。[7] - 収益改善と構造改革
2025年は大幅な事業環境悪化を受け、リストラ・減損・資産関連費用を計上しました。2026年1月には、追加の構造改革として約4,500人の人員削減を含む「Transform to Outperform」を打ち出し、少なくとも20億ドルの追加的な収益改善を目指す方針を示しました。[8]
沿革
- 1897年:ハーバート・H・ダウによりThe Dow Chemical Companyとして創業。
- 2017年8月:ダウとデュポンが合併しDowDuPont発足。
- 2019年:4月1日にマテリアルサイエンス部門がダウ(Dow Inc.)として分離・上場、6月1日に農業のコルテバ(Corteva)が分離、残存会社はデュポン(DuPont)に改称。
最近の業績トピック
- 2025年通期:売上高は約400億ドルで、2024年の約430億ドルから7%減でした。GAAP純損益は24億ドルの赤字、営業EBITは4億ドルでした。価格下落、統合マージンの圧縮、合弁会社の持分損益悪化、減損・リストラ費用が重荷となりました。[9]
- 2026年Q1:売上高は97.94億ドルで、前年同期の104.31億ドルから減少しました。GAAP純損益は4.45億ドルの赤字、営業EBITは1.54億ドル、営業EBITDAは8.73億ドルでした。営業キャッシュフローは11.24億ドル、フリーキャッシュフローは6.21億ドルと、損益は厳しい一方でキャッシュ創出は改善しました。[10]
- 事業環境:化学品市況は、建築・建設、耐久消費財、工業用途の弱さ、欧州の高コスト構造、世界的な供給過剰、価格下落の影響を受けています。Dowは短期的にはコスト削減と資産整理で耐え、中期的には低コスト原料、北米資産、循環型・低炭素素材、特殊用途の高付加価値化で収益改善を目指しています。[1][8]
ミニ解説
- 指標の読み方:「29カ国・91製造拠点・約34,600人」は2025年末の実績値です。旧稿の「30カ国・約36,000人」は2024年末時点の数値で、2025年版では更新が必要です。[1]
- Path2Zeroの意義:エチレンは化学の基礎素材です。スコープ1・2正味ゼロの大型一貫設備は、将来の炭素コストや顧客の脱炭素調達に対応する戦略的資産になり得ます。ただし、2025年4月に建設遅延が発表されており、投資回収時期は市況に左右されます。[3][4]
- 化学会社の景気感応度:Dowのような素材メーカーは、販売数量だけでなく、原料価格、製品価格、稼働率、合弁会社の損益に大きく左右されます。2025年は数量が横ばいでも価格が下がり、利益が大きく圧迫されました。[1]
【注】(出典リンク)
- 2025年年次報告:売上約400億ドル、29カ国、91製造拠点、従業員約34,600人、地域別売上、事業概要、リスク → Dow 2025 Annual Report(PDF) / Dow IR Annual Reports(確認日:2026-05-10) ↩
- 2025年セグメント別売上・営業EBIT:P&SP、II&I、PM&C → Dow 2025 Annual Report(PDF)(確認日:2026-05-10) ↩
- Path2Zero:2023年FID、投資額約65億ドル、スコープ1・2正味ゼロのエチレン一貫設備計画 → Dow IR(2023/11/28) / Dow Canada Path2Zero(確認日:2026-05-10) ↩
- Path2Zero建設遅延:2025年4月発表、2025年CapEx削減、プロジェクト継続方針 → Dow 1Q 2025 Earnings News Release(PDF)(確認日:2026-05-10) ↩
- Circulus買収:年5万トンの再生材能力、北米2施設、2024年買収 → Dow IR(2024/06/20) / Dow 2024 Form 10-K補足(確認日:2026-05-10) ↩
- ラミネート用接着剤事業売却完了:対価1.5億ドル、5拠点移管 → Dow IR(2024/12/02) / Arkema発表(確認日:2026-05-10) ↩
- 欧州3資産閉鎖:独ボーレンのエチレンクラッカー、独シュコパウのCAV、英バリーのシロキサン、2026〜2027年実施予定 → Dow IR(2025/07/07) / Reuters補足(確認日:2026-05-10) ↩
- Transform to Outperform、4,500人削減、少なくとも20億ドルの収益改善目標 → Dow 2025年Q4決算発表 / Reuters補足(確認日:2026-05-10) ↩
- 2025年通期決算:売上400億ドル、GAAP純損失24億ドル、営業EBIT4億ドル、営業CF11億ドル、配当15億ドル → Dow 2025年Q4決算発表(確認日:2026-05-10) ↩
- 2026年Q1決算:売上97.94億ドル、GAAP純損失4.45億ドル、営業EBIT1.54億ドル、営業EBITDA8.73億ドル、営業CF11.24億ドル → Dow 2026年Q1決算発表 / 1Q 2026 Earnings Presentation(PDF)(確認日:2026-05-10) ↩
四半期決算(EPSと売上)の推移:予想と結果
最後に、四半期決算について予想と結果を確認します。
売上高とEPSについて、マーケットのアナリスト平均値と企業の発表を比べてみます。
(単位はEPSがドル、売上高が100万ドル)。
【出典】

